石畳のかまど

クソデカ感情踏み越えろ!!!!!!!

【映画感想】星の動きは変わらない

全エモのオタクーー!!!!!!!!!!!!
映画「ガタカ」を観てくれーーーーーーーーー頼む!!!!!!!!この通り!!!!!!!!

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▷あらすじ

遺伝子工学の発達によって優秀な遺伝子を組み合わせて生まれた「適性者」が支配し、人間の生活も固定化されてしまった未来世界。そんな折り、自然出産で生まれた「不適性者」のヴィンセント(イーサン・ホーク)は、宇宙飛行士になる夢をかなえるため、遺伝子適性をごまかして宇宙局「ガタカ」へ入社。しかし、ある日社内で殺人事件が起きて、ヴィンセントが犯人と疑われてしまい…。 (Amazon商品説明より引用)

出演:イーサン・ホーク
ユマ・サーマン
監督:アンドリュー・ニコル

ブログのタイトルは作中の人物・ジョセフの台詞から引用です。ジョセフは宇宙局の局長で、殺人事件が起こった後に犠牲者を弔いつつ「確かに可哀想な事件だが、星の動きは変わらない」と木星の月に船を飛ばす予定を決行する意思を告げます。
そうなんですよ。この場合の星が指すのは本当に星そのもの。でもジョゼフの台詞が不適正者であるヴィンセントに向けられると意味が変わってくると思いません? 星はしばしば運命とイコールで語られますし。

監督天ッッッッッッッ才、いやもう鬼じゃん!? 作中の会話そんなんばっか。

映画タイトルのGATTACAは遺伝子塩基の頭文字で構成されてて、宇宙局がいかに遺伝子を重視しているかを伺えます。肌色差別時代が遺伝子差別時代に移り変わっていて、近い未来で起こりうる設定にもゾワゾワする。
この映画、1997年公開作品なんですけどね。

さて、自然出産で生まれたが故に不適正者として生きる羽目になったヴィンセントは決死の努力をし、それも虚しくガタカの清掃業者として働きます。実力より遺伝子の時代だから、多大な時間を夢に費やしたヴィンセントは道を呆気なく断たれる。
そこに協力者・ユージーンが現れる。ユージーンは遺伝子情報だけで言えばサラブレッド中のサラブレッド、いや最早太陽。合コンで「どうもイケメンです。出身大学はハーバード。親は石油王とケイト・ブランシ◯ットです。よろ」って言って宇宙からも求婚されるようなもの。知らんけど。
でもユージーンは身体障害者です。元水泳選手として世界の2位にまで上り詰めている。道半ばで片脚を失ったから人生おじゃん。残ったのは遺伝子だけ。宇宙からも求婚される程の遺伝子だから、他人に提供すれば半永久的に生きられる。いわばヒモの能力が遺伝子には込められている。

「優秀な遺伝子を持っていて銀メダルだ。そんなジェローム(ユージーン)をどう演じる?」

適正者のユージーンは不適正者のヴィンセントに問います。ヴィンセントはユージーンの名であるジェロームとして人生を歩み始める……。


ここまで読んでくれたオタクー!!!!!気になってきたでしょ!!!!!!!!見てね!!!!!!
ってことでここから先はネタバレ。


◯◎◯◎

















ヴィンセントとユージーン終始すごくない?(クソ腑抜けオタク発言) ヒロインのアイリーンを差し置いて2人についてめっちゃ語るけどアイリーンのファンです。

◯不幸な事件・事故

「‪人の不幸が幸運を招く‬」。作中からの引用のとおり、ヴィンセントの幸運の裏側にはユージーンの事故と殺人事件がつきまとうわけだけど、ユージーンの事故に関しちゃ実は故意だったことが判る。というか自殺"未遂"。そこでユージーンが死んでたらヴィンセントは宇宙へ飛べなかったかもしれない。
そのときのやりとりもすごいよね。吐くほど飲んで、もともと使えない足をより覚束なくさせて、「あのときは素面だった」。寝落ちたユージーンの寝顔を見、ヴィンセントは「相当酔ってるな」と眉間にしわを寄せ、事故の原因が自殺未遂という現実を半分聞き流す。よさがすごい。

◯アイリーンへ会いに出かけるヴィンセント

ヴィンセントが誰に会うのか尋ねられ「みんなだよ」と答えると、ユージーンは「みんな、ね」と復唱する。だからなんだって話なんだけど彼女の存在を察してる感いいよね。アイリーン(ヴィンセントの同僚)は本当にかわいい。
血液を採取されたユージーンのデータが同僚であるジェローム(ヴィンセント)と一致し、驚いたアイリーンに「(俺を)誰だと思ってたの?」と投げかけるシーンもよきよきのよきだよね。アイリーンが最初に知ったジェロームはヴィンセントで、でもジェロームという名前にとってユージーンは前者、ヴィンセントは後者っていう時間のズレがいい。

◯ユージーンの自殺

「俺がいないと困るだろ」。ヴィンセントはとうとう木星の月に向かって離陸する。その直前にユージーンから一生分のサンプルをもらう。怪訝な顔をするヴィンセントに向けられたこの台詞。誰がこんな和訳をしろと言った。あざっす。
ヴィンセントには「旅をする」と言い残したユージーン。実際は焼却炉に入り、いつかの銀メダルとともに身を焼く。それが彼なりの「旅」だった。
このエンディングは無限にすごい。ヴィンセントは夢を叶えて宇宙を旅し、ユージーンはこのタイミングで自分から脱却することを選んだ。ある意味、ともに空を飛んだんだよね。しかも、「旅」としか聞かされてないヴィンセントは、おそらくユージーンが死んだなんて思ってない。ユージーンは一方的な選択で身体に火をつけた。
「身体を提供する代わりに夢をもらった」。この映画はユージーンの夢の代償をきっちりと精算して終わる。
上に行く。宇宙を夢見るヴィンセントは作中でしばしばこの言葉を使う。ユージーンもまた上に行った。ジェロームの名はヴィンセントに引き継がれ、同時にヴィンセントとユージーンは同じ個体になったのでは?

◯手紙

ここでやられたエモのオタク多いでしょ……てか下手したらタイトル回収じゃん……。
ユージーンはヴィンセントとの別れ際、「船内で読んでくれ」と言って手紙を渡す。ヴィンセントは約束どおり宇宙船内で手紙を開くが、そこには一房の髪しかなかった。
作中にはアイリーンからヴィンセント、ヴィンセントからアイリーンへ自分の髪を受け渡すシーンがある。自分の弱みーー劣性遺伝子を知ってもらうための行為だったが、「風に攫われた」と言ってその髪を捨て、2人は相手の遺伝子情報を調べなかった。
まさか、その2人のやりとりがユージーンにまで繋がるとは思わない……じゃん……。手紙として髪の毛が渡された、ということは遺伝子情報を読んでほしいってことでしょ?
周知の通り映画タイトルであるGATTACAは遺伝子塩基の頭文字で構成されている。GATTACAってユージーンの髪の毛に記された塩基配列の一部だったりしない????? しないか!!!!!!
さて、ユージーンにとって世間最強の遺伝子は弱みだったというクソエモ仮説を立てるね。でも、それ以上に自分という存在を抹消しておいて髪の毛だけは自分からのメッセージとして遺すという行為からの方がクソデカ感情が湧くよ。血液やらなんやらはヴィンセントの新たな人格の一部として残されたけど、髪の毛はユージーンからヴィンセントへのメッセージとして遺された。このクソ重展開こっっわハゲそう。とにかく手紙のくだりは色々な仮説を立てられると思うけど、オタク、エモいことだけは分かったよ。

この映画、クソデカ感情が湧くから時間を忘れたい人間しか見ちゃダメだな。