石畳のかまど

クソデカ感情踏み越えろ!!!!!!!

【映画感想】LOVE AND DEADー俺らの集大成が絶体絶命都市に転送されたらー

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劇場版おっさんずラブ見たよーー!!!9割笑って1割泣いて、合計して10割号泣って感じだった!!!
腐女子の人格もエモオタクの人格もお笑いド根性も全部満たされた。
おっさんずラブのすごいところは「男も女も年上も年下も上司も部下もなーんも関係ないよ!」を前面に押し出しつつ、一般ウケもするように作り込まれてる点だよね。納得の最高。英知の結晶。

以下うろ覚えセリフ諸々が入ったネタバレ















◯変化球ファミリー

「家族」をテーマに進められただろう劇場版おっさんずラブ。新人のジャスティスは家族を失っていて、マロはひとまわり年上の女性と一緒になりたくて、看護婦に患者(部長)の家族かと問われて即答する同僚数名がいて、春田は新しい家族欲しさにパートナーとすれ違った。
どう見ても黒幕だった狸穴さんと天空不動産側が退去を求めたうどん屋さんが実は家族関係だったのにはびっくりしたけど、そのおかげで狸穴さんに人情味がもたらされた。それぞれのバックグラウンドと性格と行動に筋が通っててすごいぞ、おっさんずラブ
ラストの牧と春田が視聴者をよそにもう家族だったのもよかったよねーー。プロポーズシーンを見せず、指輪で悟らせる映画。試されるオタクの観察眼。


◯売り言葉に買い言葉

OLの会話ってすっごくリアルだよね。ヒートアップしてる人間って側から見ると面白いこと言ってたりするし、それを「書く」のって難しいと思う。だからリアルと創作のいいとこ取りした会話を巧みに操ってるOLはすごい。
サウナで「人に熱意を伝えるのって難しいな」と言った部長のダブルミーニングセリフ(街の人に対する退去願いと春田への恋心)だったり、「部下の良いところを10個言えるか」と喧嘩をふっかけられたことに対抗して「部下の悩みを10個言えるか」と返すテンポの良さだったり……。
牧と春田の喧嘩シーンもよかった。
互いへの不信感が高まっている中でのハッピーお祭りデートで全て解決! かと思いきや、牧には上司である狸穴さんからのメールが途絶えず、嫉妬のあまり「いいよ、俺より仕事の方が大事なんだろ。行ってこいよ!」と春田は声を荒げてしまう。
「いちいち細かいよな牧って! ジャスティス(後輩)といる方が楽しいわ」
「狸穴さんはそんなガキみたいなこと言いませんし」(ニュアンス)
わ、わ、分かる〜〜!! 人と人とを比較することは人類にとって最もアウトオブ平和。すれ違うに決まってる流れだから絶対に断ち切るべきなんだけど、口論中に周りが見えるはずもなく春田は心の内とは反対に「別れよう」と吐き捨てる。
牧の父に「牧の仕事のために別れてくれ」と請われた春田だから、本音とは裏腹の「別れよう」が不意に出てしまうのは自然っちゃ自然なんだけど、牧はそんな裏事情知らないから単に嫌われたと受け止めたんだろうな……。
あと「牧ってベビーカステラみたいな顔してるよな」と言ったはるたんの感性のかわいさとそれな感すごい……。
終盤で狸穴さんが実家を訪れて「たぬきそばで」と注文を済ませ、親父さんが「うどんじゃないのかよ」と小言を言うのもよかった。全セリフが生きてて好き。


◯演技が上手い

そりゃプロだから当然なんだろうけど、映像作品を見るたび「役者って演技うまー」としみじみ思う。
春田と牧が花火を見上げたシーンでは相手に見惚れる一瞬の間があった気がするんだけど、そこで使われたカメラは定点で、牧と春田の横顔が切り取られるわけでもなくただ花火の明かりが2人を照らしていた。牧がふと春田を見、花火に目を移した後春田は牧の横顔をそっと眺める。このコンマ数秒の間の取り方が上手すぎた。
役者さんの中でそのキャラクターは生きてるんだなあ;;


◯たけかわまさむね

とにかくとてもいい。


◯蝶子さんとマロ

恋愛に年齢は関係ないっていう別テーマのカップル、今回もパーフェクトでした。
蝶子さんは終始自分の年齢を気にされてて、それは一見自分より少し長い未来があるマロのためだけど実は傷つきたくない自分のためってのがいじらしい。蝶子、マジで好きだ。
これは妄想なんだけど、年齢を気にして深い色の口紅を使っている蝶子さんに「この色、明るくて絶対蝶子に似合う」って勧めるマロよくない? 見たいなあ。蝶子さんは即却下するけど結局流されて買っちゃう。ハイブランドじゃなくて1500円くらいだとなおいい。


◯フィクションの手前

メディアに疎いから知らないだけかもしれないけど、ゲイを中心にドラマを展開するという試み自体なかなかのチャレンジだったと思うし、ある意味パイオニアだったわけだから無難に「みんな大好きイケメンホモだよ〜〜♡」に着地してもおかしくなかった。
でもOLは一貫して「激情の前にあるのは性別ではなく人間」を描いてくれてる。それ! 見たかったのそれ! スタッフマジでありがとう!


◯死んでも牧がいい

あの、あのシーン本当にダメだった。あのとき爆発したのは時限爆弾じゃなくて自分だった。
炎に囲まれて「唐揚げってこんな気持ちなのかなあ」と言い始まるムードのなさが春田らしいし、その空気の読めなさに真面目すぎる牧は救われているんだね。
「牧ってほんっと細かいよな」「春田さんがガサツなだけでしょ」「……ダメ?」「ダメじゃないです」。
春田ほんとそういうとこ。甘え方を知ってる人間、世界一かわいい。
牧と家族になることが自分の夢だと物語の途中で気づいた春田。周りの人間にはそれらしい夢があって春田にはないような描写があったからこそ、ここで「この人、開始からずっと無我夢中で夢を追ってたんじゃん」と泣いた。泣いてるうちにあのセリフがきた。
「歳を取ってさ、俺が俺ってこと忘れてもさ、それでも牧がいい。死んでも、牧じゃなきゃ嫌だぁ……」
!??! もーーーーーーーーーーーー……。覚悟した2人のLOVE AND DEAD。ORどころじゃねえ。死んでも牧じゃなきゃ嫌だ? もっかい言って? 死人に口なしなのに、死んでも春田は牧を望むの?
シンプルに泣いた。たしかに自分は長年腐女子をやってるけど、男女だろうが女同士だろうがなんだろうがこのセリフは最高でしょ。純な愛よ。
互いの欠点を受け入れあってからの言葉だから説得力と威力を増してる。自分、「完璧」なハッピーエンドはフィクションだからこそ実現できる主義のハピエン厨なので最高でした。牧と春田はどれだけ喧嘩しても年老いても死ぬまで一緒!!!!!!!!!!!あーーーー観に行ってよかった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


最後に、ドラマ版OL二期決定おめでとう! 劇場版を見る前は間延びしないか心配だったし、なんなら劇場版にも同じ感想を抱いてた。でもこの映画を視聴して、また9割笑って10割号泣できるんだろうなと思ったので、今は素直に楽しみです!

p.s. テーマソングにRevivalを再度起用したスタッフ、天才。